理事長挨拶
2020年11月7日の理事会及び総会において政治社会学会第6代理事長に選任いただきました。改めまして会員の皆さまに厚く御礼申し上げます。
本学会は2010年の設立以来、個別分野の垣根を取り払い、異分野・多分野の研究を連携・融合・統合した学際的学会を目指してきました。こうした活動のなかには、従来の社会科学の研究にとどまらず、人文学や自然科学など幅広い分野の知見を活かした政策研究も含まれています。これまで5人の理事長のご尽力もあって、新たな「知」の在り方を探求する分野横断型の研究、社会との対話を重視した課題解決型の活動などが数多く行われてきました。
このように社会との対話を重視してきた本学会ではありますが、その反面で課題も少なくありません。とくに研究の専門性の部分がやや弱かったように思います。学術研究という視座から社会課題の解決を考えた場合に、a) 個別分野の専門性(disciplinarity)、b)異分野間の学際性(Inter-disciplinarity)、c) 社会との協働・共創(trans-disciplinarity)が欠かせません。これまで本学会ではb)およびc)の活動に多くのリソースを割いてきたものの、a)の部分がやや等閑にされ、そうであるが故にb)についても必ずしも十分な成果を残すことができませんでした。無論、c)の重要性を否定するものではありませんが、学術研究を目的とする学会としてはa)の専門性(そしてa)を前提に拡がっていくb)の学際性)は活動の起点となるものです。この専門性の弱さが、研究志向の会員の需要に十分に応えるものではなかったという側面は否めません。このことは、学会の知名度の低さ、会員数の伸び悩み、研究大会の報告者・年報掲載論文の少なさにも影響しており、さらには財政状況の悪化とも無関係ではないでしょう。さらに言えば、c)の社会との対話や協働についても、それらを一過性のものに終わらせるのではなく、研究としての水準にまで育て、社会的に展開していくことが重要であることは言うまでもありません。
最後に、私たちは多様な構成員からなる「開かれた学会」を目指さなければなりません。本学会において、この問題はこれまで明示的なかたちでは議論されてきませんでした。今回の役員(理事・監事)改選で、役員数は34名から29名になりました。女性役員数は、34名中3名から29名中5名に変わりました。若手役員に関してはいずれも3名です。本学会の女性会員・若手会員の比率はいずれも2割程度なので、ようやく女性役員比率だけは実際の会員比率に近づいてきたということになります。しかし、若手役員の比率は依然として低く、また女性会員・若手会員の絶対数がそもそも少ないということが問題であることは言うまでもありません。開かれた学会を形成するためにも、構成員の多様性は避けて通れない問題です。2年間の任期でできることは限られていますが、専門性と多様性という本学会が持つ根本的な課題を他の会員の皆さまと解決していきたいと考えています。ご意見、ご教示をいただきながらこの学会をより良い場所にしていきたいと思います。会員の皆さまのご協力,ご支援を,どうぞよろしくお願い申し上げます。
2020年11月15日 政治社会学会 第6代理事長大賀哲
(九州大学大学院法学研究院准教授)