理事長挨拶
2012年11月に、第2代理事長となりました。初代理事長である荒木義修(武蔵野大学教授)先生のように、学識と経験、先見性をもって学会運営ができる自信はありませんが、本学会の設立時の先駆性・方向性と志を忘れずに、役目を果たしたいと思います。会員の皆様のさらなるご協力をお願いする次第です。
本学会はそもそも、文理融合で、学際的(inter-disciplinary)あるいは超学的(trans-disciplinary)な問題意識と切り口を特徴としていました。創立年の秋に開催された創立研究大会(2010年10月、早稲田大学)以来、この問題意識は継続しており、本学会の特徴になっています。この視点は今後も忘れてはならないと思います。
とりわけ、総合的な認識の必要性・重要性は、2011年3月11日の東日本大震災を経験したことで、明白になったと思います。地震、津波、原発事故への連動・波及・衝撃は、日本社会全体のあらゆる分野に及んでいます。個々の自然現象の冷静な分析は必要ですが、それらが孤立していては、せっかくの蓄積が活かされません。自然現象間の認識の共有化・すり合わせが必要です。さらには、社会的記憶と伝承などの文献記録の冷静・客観的な解明・蓄積も重要ですが、自然現象の解析とのつき合わせも見逃してはなりません。加えて、こうした緊急事態における政府・自治体の判断・決定・責任の事前想定が不可欠なだけでなく、それを恒常的にチェックする見直し・改善プロセスも備えていなくてはなりません。要するに、社会現象としても、例外的な非常事態への対応は総合的でなくてはならないように、学問的にも、それぞれの分野の研究に没頭して自己満足していては、肝心の社会的ニーズが出現したときにおろおろと右往左往するばかりで、適切な処方箋を具体的に提示することができません。われわれの研究は、平時の安定的な均衡状態だけを精緻に前提・分析の対象とするのではなく、緊急の不連続状態への適応をも見据えた幅広さと強靭さを待たなくてはならないのです。
本学会の会員は、既存のすでに確立した学問体系に安住することなく、新規の分野や手法などに果敢に打破する気持ちを秘めているはずです。本学会では、こうしたチャレンジングな問題意識と精神を共有することで、現在の安定的な社会構造の中で容易に認識のおよばない現象の解明を進めると同時に、現時点では簡単に予見できない事態への備えにも取り組みたいと思います。会員の皆様の勇気ある挑戦に期待します。 以上
政治社会学会(ASPOS)理事長
原田 博夫
(専修大学大学院経済学研究科長・教授)